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第258話 また来てもいいですか

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-10-12 06:01:05

「抱かせてって、言ったの。私、言ったのに。兄さんが、駄目だって。あの子は……」

 呼吸が乱れた。

 医師が一歩近づく。

 看護師が酸素の流量を確認した。

 私は、手を離すべきか迷った。

 葵さんの指が、私の指を引っかけるように握っている。

 触れている指の重みだけが、妙にはっきりしていた。葵さんの指が離れないことを、私は手のひらで確かめていた。

 離せば安心するのか、置いていかれたと思わせるのか、分からない。

「ここにいます」

 自分がここにいていいのか、まだ決められないままで。

 口から出た声は、ほとんど自分に言い聞かせるようだった。

「今は、どこにも連れていかれません」

 葵さんが、目を細める。

 聞こえたのかどうかは分からない。

 乱れていた呼吸が一つだけゆっくりになった。

「連れて……」

 葵さんは、その言葉だけを拾った。

「抱いたら、連れていかれる
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